2024 年 52 巻 3 号 p. 195-202
近年,頭蓋内硬膜動静脈瘻(intracranial dural arteriovenous fistula:DAVF)への定位放射線手術(stereotactic radiosurgery: SRS)の有効性が報告されている.われわれは2015年以降,3次元回転血管撮影(three-dimensional rotational angiography:3DRA)によって得られる高空間解像度画像をDAVFへのSRSに統合しており(3DRA-SRS),磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)を基軸とした従来法(conventional SRS:c-SRS)との比較でその有効性を検証した.対象は1990年6月から2023年5月までに当院でDAVFに対してSRSを施行した65例とした.3DRA-SRS,c-SRSの2群間でのDAVF閉塞,SRS後出血,症状改善率,放射線有害事象を後方視的に検証した.3DRA-SRSは30例,c-SRSは35例で施行された.RA-SRS群における累積DAVF閉塞率は72%/2年,83%/5年であり,c-SRS群(それぞれ31%/2年,69%/5年)と比較し有意に高い閉塞率を達成した(ログランク検定,p=0.010).DAVF閉塞に関する多変量解析では,3DRA-SRS(ハザード比 2.09,95%信頼区間 1.09-4.00,p=0.026)が有意な閉塞関連因子であり,CVRなし(ハザード比 1.90,95%信頼区間 0.99-3.63,p=0.053)は統計学的に境界領域であった.全体で累積無出血生存期間は96%/10年であり,3DRA-SRSとc-SRSの2群間に差は認めなかった.累積症状改善率は3DRA-SRS群で80%/1年,100%/2年であり,c-SRS群(それぞれ39%,54%)と比較して有意に改善率が高かった(ログランク検定,p=0.002).DAVFへのSRSは効果的かつ安全性の高い治療法といえる.3DRA画像統合によりDAVF閉塞率,症状改善率は有意に向上した.