Second Language
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日本語話者の英語の3単現の-sに対する敏感度 : 事象関連電位データに基づく考察
若林 茂則福田 一彦坂内 昌徳浅岡 章一
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2007 年 6 巻 p. 19-46

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抄録
第二言語学習者による形態素使用の誤りは, かなりの上級者になっても見られることがよく知られている, 近年, 特に極小理論の枠組みでは, この誤りの要因をめぐって, 多くの研究がなされ, 要因がどのレベルにあるかどうかが議論されている, これまでの研究は, 発話や読解速度などの行動的データを基に論じられてきた.本研究では日本語話者による主語と動詞の一致に対する敏感度について, 脳生理学的データ (事象関連電位) を収集した.データによれば, 日本語話者は, 主語と動詞が人称素性において一致しない場合 (例*I answers your letter) は, ERPにP600が現れるが, 数素性については, 3単現の-sが過剰使用された場合 (例*The teachers answers our questions; *Sam and Adam answers our questions) でもP600が現れない.この素性による反応の違いは, 形態素使用の難しさの原因が, 統語構造を形態素に置き換える段階のみにあるのではなく, 列挙の段階で数素性を取り込むのが難しいことを示唆する.また, この2つの素性の間の違いは, 人称素性が名詞句に内在的な素性であるのに対し, 数素性は随意的であること, あるいは, 人称素性は学習者の母語に存在するが数素性は存在しないこと, もしくはその両方に起因すると考えられる.
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© 日本第二言語習得学会
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