物理探査
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論説
北海道の長周期地震動と深部地盤構造:レビュー
笹谷 努前田 宜浩高井 伸雄
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2006 年 59 巻 4 号 p. 315-326

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抄録

 本論説においては,北海道における長周期地震動(周期 3 秒から20秒の地震動)と深部地盤構造についての研究をレビューする。長周期地震動に関する研究は,気象庁 1 倍強震計(機械式変位計:固有周期=6 秒(水平動),5 秒(上下動))の記録の解析から始められた。この強震計は,十勝平野や勇払平野のような大きな堆積盆地において,大地震の際に S 波に続く盆地表面波(盆地生成表面波と盆地転換表面波:前者は盆地への S 波の入射によって,後者は盆地への表面波の入射によって 2 次的に励起された表面波である)をきれいに観測している。デジタル観測計器及び広帯域強震計の開発に伴い,盆地内でのアレー観測から,これら表面波の波動の性質及び伝播特性が明らかにされるようになった。一方,深部地盤構造の研究は,石油・天然ガスの探査を目的に始められた。しかし,最近では,国の施策として,地震災害の軽減を目指した高精度な強震動予測のために全国各地で深部地盤構造モデルが作成されている。そして,北海道においては,このモデルを用いて石狩低地東縁断層帯を想定した強震動が評価されている。最後に,このような状況下で発生した2003年十勝沖地震(気象庁マグニチュード 8)による大量の強震動データに基づく長周期地震動と深部地盤構造との関係についての研究をレビューする。

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© 2006 社団法人 物理探査学会
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