抄録
西安古城壁は,明代の1378年に完成したもので,当時の形がほぼ完全に保存されている中国で唯一の城壁である。現存する城壁としては世界的にみても最大級のものであり,また,城壁の西門(安定門)はシルクロードの起点としても知られていて歴史的文化遺産としての価値は極めて高い。城壁の外周は約14kmにおよび,高さは約12mである。断面は台形型で,上部の幅が12mから14m,下部の幅が15mから18mである。しかし,西安古城壁は,その内部に防空壕として掘削された総延長41kmにもおよぶ空洞が存在していることが知られている。特に城壁浅部に空洞が存在する地点では,陥没事故が生じるなどの被害が生じている。この歴史的文化遺産を保護するためには,空洞の分布を把握し対策を講じる必要がある。歴史的に極めて価値の高い構造物であるため,可能な限り非破壊での調査が望まれる。そこで,本研究では,城壁南門付近の100mの領域において地中レーダを用いた空洞探査を実施した。特に今回は陥没事故の原因とされている城壁浅部に存在する空洞の把握を目的とした。調査の結果,城壁浅部に空洞の存在を示唆する強い反射イベントが確認された。また,3次元マイグレーションを行った結果,空洞を3次元的に把握することができた。さらに,城壁表面のクラックの位置が,地中レーダにより検出された空洞位置や城壁内部の地盤状況とよく対応していることが明らかになり,歴史的文化遺産保護において重要な情報を得ることができた。