物理探査
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論説
社会システムマネージメントへの物理探査の貢献
松岡 俊文
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2013 年 66 巻 4 号 p. 221-242

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抄録

 技術に対する評価基準は,国土交通省が事業入札時の応札評価基準要素として採用している「知識」と「構想力・応用力」から成ると考えて,物理探査の意義を歴史の中で見直し,近未来の物理探査への期待を述べる。「構想力・応用力」の中核をなす技術的工夫・革新は,事例適用を経て定型化・大衆化・陳腐化することが認識でき,その歴史を通して現状での技術革新のヒントが得られる。個別細分化しつつある科学に対し,地球システムに関わる技術では,地球における人間生活全体を見るべき必要がある。これを重視し「知識」拡充ばかりでなく,革新技術の成果物を必要とする広い分野の顧客の創出に努力すべきである。
 世界と並行して進んだ日本での物理探査(特に弾性波探査)の歴史を,地質調査所における進展と渡辺貫の土木物理探査技術の創出と展開に見ると,外国技術の移入・吸収の歴史と,一人の地質専攻者が達成した目的志向による技術実践重視の土木物理探査技術の普及と工夫の歴史が浮かび上がる。地下浅部と深部での探査の相違はあるが,比較のため,資源開発分野での物理探査史を見ると,30年毎の技術革命が見える。①1930年代の創生期での現場重視の技術開発。②1960年代のディジタル機器の発達による収録技術と処理における革新。その成果物情報の質的向上による,解釈・評価における「地震層序学」の創出。③1990年代以降の電子機器の向上による可視化技術を含めた三次元地震探査の常態化と,インバージョン処理による地層物性表現などの実現。一方,土木物理探査においても,この間の発展は大きかったが,新規顧客獲得の困難さ,現在の利用者側から成果物提供者側への過剰な要求項目の実現に戸惑っている。
 次の技術革新は2020年頃と期待し,その実現には,①成果物の解析・評価の目的を直接反映させる技術開発,②技術者自身の技術革新への積極的な姿勢,③「走時」と「実体波」の超克,④物理探査の「物理学」という狭い枠付の打破が必要となろう。

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© 2013 社団法人 物理探査学会
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