物理探査
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ケーススタディ
山川地熱地域における3次元弾性波探査フィールド実証試験
青木 直史新部 貴夫佐藤 馨寺西 陽祐三浦 卓也持永 尚子原 彰男熊野 裕介中田 守福田 真人毛利 拓治
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2017 年 70 巻 p. 124-141

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抄録

阿多カルデラ内部に位置する鹿児島県山川地熱地域において,地熱貯留層の位置や形状の高精度把握技術の開発を目的とする弾性波探査実証試験が実施された。本実証試験の目標は,山川地域の地熱貯留層構造の詳細検討を通じて,反射法・屈折法統合弾性波探査の断裂系評価法としての有効性と,電磁探査や重力・磁気探査と組み合わせる統合物理探査の地質評価法としての可能性を示すことであった。本試験データの3次元反射法記録とそのジオメトリカルアトリビュート解析からは断裂系の連結構造が可視化されたほか,屈折トモグラフィ解析とフルウェーブインバージョン(FWI)解析からは複雑な弾性波速度構造が明らかとなった。さらに,弾性波探査をガイドにした既存のMT / 重力 / 磁気データの3次元逆解析により,比抵抗・密度異常・磁化ベクトルのモデルを推定し,弾性波探査や坑井の情報との対比や地球統計学的な検討を通じて,岩相および温度構造のモデルを推定した。そして,これら一連の作業手順は3次元地質モデル構築ワークフローとして総括した。また,本試験データを用いたデシメーションテストでは,多くの国内地熱地域が位置する山岳部における弾性波探査の適用性を評価した。ここでは,準3次元的なデータ取得配置であっても,5D内挿法や共通反射面(CRS)重合法などのデータ補間技術を適用することにより,3次元構造把握が可能であることが示された。

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© 2017 社団法人 物理探査学会
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