物理探査
Online ISSN : 1881-4824
Print ISSN : 0912-7984
ISSN-L : 0912-7984
技術報告
時間領域IP法の2.5次元モデリングとインバージョン
水永 秀樹石永 清隆
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 70 巻 p. 69-79

詳細
抄録

本研究では,より現実的な時間領域IP法のデータ解析のために,比抵抗にコール・コールパラメータを組み入れて,見掛比抵抗の過渡応答が計算できる有限要素法による2.5次元モデリングプログラムを開発した。これまでの時間領域IP法では,過渡応答を積分して求めた見掛充電率しか使用していなかったので1つの擬似断面しか得られなかったが,今回開発した2.5次元モデリングプログラムを使うことで,任意の時間での擬似断面を作成することができる。これにより,充電率だけでなく時定数や周波数依存係数の違いによる擬似断面の時間変化をシミュレートすることができ,時間領域IP法のデータ解析に役立つものと期待できる。

また,時間領域IP法の観測データから4つのコール・コールパラメータ(比抵抗,充電率,時定数,周波数依存係数)の地下断面を求めて鉱種の識別を行なうため,時間領域IP法の2.5次元インバージョンプログラムを開発した。今回開発したプログラムでは,2段階でインバージョンが行なわれる。最初に時間毎に2.5次元比抵抗インバージョンが行なわれ,ブロック毎の比抵抗値が求められる。次に各比抵抗ブロックの比抵抗値の時間変化を過渡応答データとして,コール・コールモデルを基にしたインバージョンが行なわれ,ブロック毎に4つのコール・コールパラメータが求められる。このプログラムを用いて,異なるIPパラメータを持つ鉱体モデルでインバージョンを行なった結果,各コール・コールパラメータが精度良く求められることがわかった。また比抵抗と充電率が等しく,これまで区別が困難であったIP異常体の違いも,時定数や周波数依存係数を利用することで識別できることがわかった。現状の時間領域IP法では比抵抗と充電率以外の情報はほとんど利用されていないが,時定数や周波数依存係数の分布まで求められる2.5次元インバージョンが可能となったことで,金属鉱床探査でのIP法の適用可能性が広がった。

著者関連情報
© 2017 社団法人 物理探査学会
前の記事 次の記事
feedback
Top