物理探査
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論文
室内透水試験における亀裂を有する安山岩の水飽和度と複素比抵抗および弾性波の関係
澤山 和貴北村 圭吾藤光 康宏
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2018 年 71 巻 p. 71-85

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抄録

地震探査,電磁探査をはじめとした物理探査による地下流体の分布評価は,地熱資源をはじめとした流体資源の開発に不可欠であり,その探査精度を向上するためには岩石の物理的性質を実験的に詳細に調べる必要がある。本研究では,地熱貯留層を構成する岩石の水飽和度と複素比抵抗ならびに弾性波の関係を実験的手法によって明らかにすることを目的とし,岩石コアの室内透水試験を行った。実験供試体は,既存のマクロクラックに加え人工的に熱性亀裂を造成した安山岩(空隙率10.5%)のコア試料を用い,封圧20 MPa,温度25 ℃の条件下で透水試験中の水飽和度,浸透率,複素比抵抗(測定周波数10-2−105 Hz)および弾性波(P波,測定周波数250 kHz)を測定した。透水試験では,地熱貯留層内の水飽和度変化を再現するため,はじめに過熱蒸気を模擬した窒素ガスで空隙を充填させたのち,塩水(1 wt-% KCl溶液)を一定圧力で注入する窒素−塩水置換試験を行った。この試験の結果,塩水注入前の複素比抵抗は104 Ωmのオーダーであったのに対し,注入後の複素比抵抗は2桁低い102 Ωmのオーダーとなった。また水飽和度の上昇に伴う複素比抵抗の連続的な減少が確認され,この水飽和度と複素比抵抗の相関には有意な周波数依存性は認められなかった。同時に測定していたP波速度は,注入水圧や水飽和度の変化によってほとんど変化しなかった一方で,P波の振幅には水飽和度の上昇に伴う連続的な減衰が認められた。これらの結果から,複素比抵抗はP波速度に比べて微細な水飽和度の変化に対する感度が高いことが明らかとなり,地熱貯留層における緩やかな水飽和度の変化が,複素比抵抗によってモニタリング出来る可能性が示唆された。また水飽和度の上昇に伴うこれら物性値の変化から,本研究試料内の窒素−塩水二相流体流動挙動は2つのステージに分けられることが推察された。

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© 2018 社団法人 物理探査学会
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