物理探査
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論説
最初の物理探査と地震波動の数値シミュレーション
佐々 宏一
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2020 年 73 巻 p. 227-235

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抄録

日本の研究者が実施した最初の物理探査は1915年にマーシャル諸島で京都帝国大学理学部の松山基範がエトベス重力偏差計を用いて実施した重力探査であり,その探査目的はサンゴ礁の下の岩盤面の深さである。内地で最初に実施された物理探査は1919年に京都帝国大学工学部の山田賀一がターレンティベルグ磁力計を用いて兵庫県宍粟郡高野鉱山で実施した磁気探査である。電気探査は1924年に九州帝国大学工学部の小田二三男が実施した自然電位法探査であるが,詳細は明らかでは無い。論文として最初に公表された電気探査は翌年の1925年に京都帝国大学工学部の藤田義象がSchlumberger式探鉱機を用いて柵原鉱山等で実施した自然電位法である。最初の地震探査は1931年に山形県梵字川上流渓谷で水力発電所用の堰堤建設予定地点の川底砂礫層の厚さを求るために東京帝国大学理学部の波江野清蔵が実施した屈折法探査である。

我が国で作成された最初の地震波動の数値シミュレーションを行い得るプログラムは,筆者が京都大学工学部に在職中に作成し,Days2-Codeと名付けたプログラムである。本州四国連絡橋公団は南備讃瀬戸大橋建設のために世界で最初の海底無自由面発破という特殊発破を計画した。そこで筆者はこの特殊発破によって発生する全ての現象を予測するための数値シミュレーションを1974年に実施した。本州四国連絡橋公団はその結果を参考にして1975年に試験発破を実施した。試験発破によって発生した地盤振動の実測結果はシミュレーションによる予測結果と対比され,両者が良く一致していることが確認された。なお,実測された地盤振動の大きさは従来から用いられていた発破振動推定式を用いて計算された値の約7倍であった。このことからDays-2 Codeによるシミュレーションの有効性が確認された。

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© 2020 社団法人 物理探査学会
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