本研究では,凍結による表層地盤の物性変化が地震動へ及ぼす影響を評価することを目的に,寒冷地である北海道北見市おいて,1年を通した重錘落下測定と表層を対象としたボアホール地震観測のデータ分析から地盤震動特性に係る季節変動の特徴を抽出することを試みた。重錘落下測定データによる基本モードレイリー波位相速度は,0 ℃線(凍結線)から明らかになった2020年12月初旬~2021年3月終旬の凍結期において,最も速い位相速度を示し,1年を通じて周波数50Hz程度で変動係数が最も大きくなることがわかった。地震動の水平動に対する地表/地中スペクトル比は,凍結期において1倍以下の減衰を示し,それ以外は1倍以上の増幅を示した。このことは,凍結により表層と基盤のS波速度コントラストが小さくなったあるいは表層と基盤のS波速度が逆転したことが要因であると考えれる。さらに,微動のH/Vスペクトルは,凍結期において1~100 Hzの周波数帯域で0.5以下の小さな値を示した。このことは,上記要因に加えて,凍結により表層地盤のポアソン比が変化したことが要因であると考えられる。凍結期における地震動の地表/地中スペクトル比の減少や微動のH/Vスペクトルの低下を実証的に明らかにし,重錘落下測定の繰り返しと表層を対象としたボアホール地震観測からレイリー波の位相速度や地表/地中地震動のスペクトル比,微動のH/Vスペクトルの季節変動を定量的に評価した。