物理探査
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解説
海底の表層地盤調査に関する物理探査の現状 -海底ケーブルルート調査における物理探査を例にして-
北 高穂橋本 健太郎大平 亮梅渓 健一郎岡村 健
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2022 年 75 巻 p. sp76-sp85

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抄録

 通信および送電のための海底ケーブルを敷設する前には,最適ルートを探索するために机上調査および原位置調査が実施される。原位置調査では,設計ルート周辺の地形・地質・障害物分布などを詳細に把握し,即時にルートを最適化する。特に,陸揚げ地点から最大水深1,500 m程度までの沿岸海域では,漁業活動や投錨などによるケーブル損傷を防ぐために,海底下1.0~2.0 m程度の深さでケーブルを埋設できるかどうかを評価する。このような調査では,音響を使った物理探査手法が主に採られ,また,磁気探査や電気探査も部分的に用いられる。

 音響探査手法としては,詳細な海底地形を把握するマルチビーム測深機(以後,MBES(Multi-beam Echosounder)と記す),海底面の底質や異物の分布を可視化するサイドスキャンソナ(以後,SSS(Side-scan Sonar)と記す),そして,表層の堆積層厚を調べるサブボトムプロファイラ(以後,SBP(Sub-bottom Profiler)と記す)が主に用いられる。不発弾や既設ケーブルといったルート周辺の障害物を探索するためには,海中磁力計(以後,MAG(Marine Magnetometer)と記す)が用いられる。また,海底ケーブルルートに沿った表層堆積層の底質判別や防触設計のために,電気探査が稀に用いられることもある。

 ケーブル埋設性評価のために,柱状採泥や海底着座式mini-CPT(Cone Penetration Test)などのジオテクニカルな手法で地盤物性を調べ,これを基にSSSとSBPによる探査結果の解釈が求められる。しかし,日本ではmini-CPTは未だ普及していないことと,柱状採泥試料は乱されている場合が多いため,埋設性評価の精度向上には,S波速度などの物理量を効率的に得る探査手法の開発・普及が期待される。

 最近の洋上風力発電施設の調査・建設においては,欧州の仕様に基づいて,機器の校正や精度確認が厳格化される傾向にあるので,海底表層地盤に関する探査技術もこの傾向に対応する必要があろう。

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© 2022 社団法人 物理探査学会
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