物理探査
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論説
物理探査の災害レジリエンス強化への活用
佐藤 浩章
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2024 年 77 巻 p. sp38-sp49

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抄録

 本稿は,物理探査学会の創立75周年を記念して,「物理探査の防災分野への活用の現状」をテーマに寄稿されるものである。令和6年能登半島地震は,1月1日に石川県能登地方の深さ16 kmで発生したMj7.6の地震で,震度7や6強の強い揺れや津波,地殻変動が観測された。この地震では人的被害や住家被害,さらに複数のライフラインの被害が報告され,特に断水や道路被害についての復旧の遅れが災害レジリエンスの観点での課題となっている。本稿では,物理探査の災害レジリエンス強化への活用について,液状化,斜面崩壊・地すべり,S波速度構造推定,減災という4つの適用先を取り上げ,令和6年能登半島地震で発生した事象を通して考察した。物理探査は,災害の予防や予測に有効な技術であり,これまでも活用されてきた。一方で,迅速な復旧や減災の視座を加えた災害レジリエンスの強化に対しては,迅速かつ広域な調査への適応やリアルタイムモニタリングの導入といった方向での既存の物理探査技術のブラッシュアップの必要性が,今回の地震から読み取れた。また,物理探査を活用してレジリエンスの高い社会を目指すには,物理探査そのものの存在や調査結果として得られた知見が,一時の情報共有だけではなく,地域における「在来知」として定着されるまでの根気強い情報の発信と連携の取り組みを進めていくことも必要である。

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© 2024 社団法人 物理探査学会
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