社会経済史学
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べヴァリッジによる「自由社会のための計画化」の変容 : 「友愛組合活用論」から「ヴォランタリー活動促進論」へ
梅垣 宏嗣
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2010 年 75 巻 6 号 p. 607-627

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抄録

1940年代における社会政策をめぐる対立の基本的構図は,「計画化」を志向する労働党およびベヴァリッジが,「計画化」に消極的なチャーチル率いる保守党に対抗するという形で描かれてきた。しかし労働党とベヴァリッジもまた「ベヴァリッジ・プラン」の解釈をめぐって対立関係にあり,前者は中央集権的な国家福祉の拡充を重視した「福祉国家のための計画化」を,後者は国家活動とヴォランタリー活動の協調関係を重視した「自由社会のための計画化」を企図し,戦後は前者が主流の地位を得た。こうした中でベヴァリッジは,友愛組合を国家福祉の枠組みの中で活用するという当初の構想から,友愛組合を含めたヴォランタリー活動全般を促進するという構想へと,自らの「計画化」を変容させていった。この変容過程は,彼が友愛組合の限界を強く意識し,それを克服すべく試行錯誤していく過程であった。すなわち彼は,ヴォランタリー活動を無条件に肯定していたのではなく,むしろその活動の具体的な問題性を自ら掘り起こすとともに解決策を模索していたのであり,ここに自由主義的介入を旨とする彼の議論の独自性が見出されるのである。

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© 2010 社会経済史学会
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