抄録
日本の税制や社会保障制度は、標準世帯という概念で制度設計が行われることが多いが、現実には多様な世帯が出現している。特に社会保障制度においては個人よりも世帯が重要になっている。本稿では、エージェントベースドモデル(ABM)を用いることで、日本の人口と世帯の将来推計を行った。ABMは、異質な複数の経済主体(エージェント)のミクロ的な選択行動が、マクロに与える影響をコンピューター・シミュレーションによって分析する手法である。本稿のABMは、個人をエージェントとして、現実の日本社会の人口や世帯構成を表現した初期値データを設定し、加齢・死亡、結婚、離婚、出産、離家、同居といったライフイベントを組み込んで分析を行った。本稿の分析結果によれば、社人研推計と同様に、人口減少や少子高齢化の進展は深刻であり、社会保障の歳出の効率化、老後に備えるための自助を促す制度設計が必要になる。世帯推計においては、3人世帯、4人以上世帯の割合が急減し、単身化が急速に進行して全世帯の約6割が単身世帯となることが示された。特に女性の高齢単身世帯の増加が見込まれる。そのため、今後は高齢単身世帯を前提とした社会保障制度の設計が重要になる。