生活経済学研究
Online ISSN : 2424-1288
Print ISSN : 1341-7347
ISSN-L : 1341-7347
論文
ワーク・ライフ・バランス制度の利用は昇進にどのような影響を与えるのか
佐々木 昇一
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2020 年 52 巻 p. 63-78

詳細
抄録

本論文は、日本においてどのようなワーク・ライフ・バランス(WLB)制度を持つ企業においてそれらの制度を社員が使用した場合に昇進を遅らせる期間にどのような影響を与えるのか、また、どのようなWLB制度を利用した社員の昇進の程度にどのような影響を与えるのか、という2つのリサーチ・クエスチョンを設定し実証的に検証した。   その結果、職場(上司や同僚)の協力確保、男性の育児休業取得促進を行っている企業は、育児休業取得に伴う昇進の遅れ期間が長引かせないという結果を得た。WLB制度の利用と昇進程度との関係では、男性において6カ月から1年以内の育児休業取得が昇進程度を有意に高める効果があり、反対に女性の場合は、その期間の育児休業取得が昇進程度を有意に低下させる効果があることが分かった。また、くるみんマークの認定は昇進の遅れを長引かせない効果を持ち、効果的に機能している。 これらのことから、政策的には、男性の育児休業を普及させるには、比較的短期間の育児休業を普及促進することが有効であり、女性の場合には、女性の役職登用も並行して推進する必要があることが言える。

著者関連情報
© 生活経済学会
前の記事 次の記事
feedback
Top