日本生気象学会雑誌
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原著
都市域のさまざまな活動空間での WBGT の比較
大橋 唯太竜門 洋重田 祥範
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2009 年 46 巻 2 号 p. 59-68

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抄録

本研究では,都市域内の活動空間によって変化する熱中症リスクの違いを定量的に評価するために,運動場,体育館(屋内),スポーツトラック,芝広場,ビル街および住宅地の6種7ヶ所の空間で,熱中症予防の指針に用いられる WBGT を計測した.その結果,熱中症が発生しやすい気象条件下であった観測期間中の日最高 WBGT には,スポーツトラックと体育館のあいだで最大4.0℃,屋外空間に限ればスポーツトラックとビル街のあいだで最大3.4℃もの差異が認められた.これは主に黒球温度の影響であり,すなわち活動空間における人体への入力放射量の違いに起因することが示された.熱中症救急搬送数と日最高 WBGT の相関分析から,活動空間の違いによる WBGT の差異は,発症リスクを評価する上では定量的に無視できない大きさであり,乾球温度と湿球温度のみから WBGT を推定する手法の利用には注意が必要であることが示唆された.

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© 2009 日本生気象学会
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