日本生気象学会雑誌
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原著
人体の熱平衡式から導かれる WBGT とその特性
―Yaglou らの WBGT 式の温熱生理的意味と特徴―
持田 徹佐古井 智紀
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2010 年 47 巻 4 号 p. 139-148

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抄録

Yaglou らが創案した WBGT(Wet Bulb Globe Temperature,湿球グローブ温度)は,米国陸軍の兵士を被験者として得たデータに基づく実験式であり,熱中症の予防に広く使用されている.
著者らはこれまでに,湿球温度計として熱放射の影響を無視できる断熱飽和温度の使用を前提として,熱平衡式を基に,日射下の戸外で使用する WBGT 式として WBGT=0.84Tw+0.30Tg−0.08Ta,日射を無視できる屋内で使用する式として WBGT=0.85Tw+0.21Tg (=Ta) を導いた.本研究では,断熱飽和温度ではなく,Yaglou らの WBGT と同様に自然湿球温度を利用することを前提として,熱平衡式に基づく WBGT 式として,WBGT=0.94Tw+0.16Tg−0.07Ta(日射下の戸外で使用),WBGT=0.94Tw+0.10Tg (=Ta)(日射を無視できる屋内で使用)の2式を導いた.自然湿球温度計を用いる場合においても,断熱飽和温度を用いた場合と同様に日射下で用いる式の気温の係数が物理的に意味のあるマイナス符号となること,自然湿球温度計を用いる場合の方が断熱飽和温度を用いる場合より,湿球の重み係数が大きくなることを確認した.

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© 2010 日本生気象学会
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