日本生気象学会雑誌
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継続的な運動が脊髄損傷者の温熱環境適応能力に及ぼす影響
三上 功生蜂巣 浩生
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2016 年 53 巻 4 号 p. 145-164

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抄録

脊髄損傷者は身体の広範囲に及ぶ発汗障害や血管運動障害などの体温調節障害を有しているが,継続的な運動が脊髄損傷者の暑熱・寒冷ストレスに対する生体負担の軽減や,冷暖房機器への依存度の低下に繋がる手段の一つとして期待できるのではないかと考え,3 名の脊髄損傷者(頸髄損傷者,胸髄損傷者,腰髄損傷者各 1 名)を対象として,継続的な運動と温熱環境適応能力の変化との関係を把握することを目的とした縦断的調査を 24 ヶ月または 42 ヶ月間かけて行った.起床時腋窩温の測定結果より,頸髄損傷者には腋窩温のレベルの上昇傾向が,腰髄損傷者には腋窩温が狭い温度範囲に収束する傾向がみられるようになった.また人工気候室実験の結果より,頸髄及び腰髄損傷者の麻痺部皮膚温に室温へ順応しようとする反応が現れるようになった.本調査より,継続的な運動が脊髄損傷者の温熱環境適応能力を向上させる可能性があることが示唆された.

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© 2016 日本生気象学会
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