2020 年 56 巻 4 号 p. 145-163
本研究の目的は, 薪ストーブを使用する木造戸建住宅に形成される室内温熱環境の実態に関する基礎的知見を得る事である. 山形県最上郡金山町におけるタイプの異なる薪ストーブ使用住宅を調査対象とし, 室内温熱環境の実測調査を2018年の冬季に行った. その結果, 断熱性・気密性が高い現代型の住宅では相対的に高温かつ気温の変動幅が小さい室内温熱環境が形成され, 良好な放射環境が形成された. 一方で, 茅葺屋根を撤去し地域型住宅の仕様で改修を行った伝統型の住宅では相対的に低温かつ気温の変動幅が大きい室内温熱環境が形成され, 特に朝方における短時間での薪ストーブ使用時にその傾向が顕著に現れた. また, 薪ストーブ使用時には総じて低湿な湿度環境が形成された. 薪ストーブを使用した暖房を検討する上で, 住宅の断熱・気密性を考慮する他にも, 住宅の気積や室の空間構成が重要な要素である事が明らかになった.