2023 年 60 巻 1 号 p. 23-30
運動パフォーマンスは、身体的要因、環境的要因、精神的要因などの影響を受ける。そのため脳では状況に合わせて瞬時に運動戦略が練られる。この場合、極めて短時間での変化であるため、関連する脳活動は微小と予測され、評価が困難である。本研究の目的は、脳波事象関連電位(ERPs)と経頭蓋ドップラー法(TCD)を用いて、運動開始時の脳活動を評価することである。被験者(成人男女11名)を対象に、負荷強度と難易度の異なる3種類の前腕掌握運動を、警告刺激あり(STM)と警告刺激なし(WPM)の条件で実施し、ERPsによって随伴陰性変動(CNV)を、TCDによって中大脳動脈平均血流速度(MCAVmean)を評価した。その結果、警告刺激によって運動開始前にCNVが誘発され、MCAVmeanが増加した。また、MCAVmeanの変化量は負荷強度に依存して大きくなったが、CNVの振幅は変化しなかった。一方でCNVの振幅とMCAVmeanの変化量のいずれも、課題難易度による差は見られなかった。これらの結果から、TCDを用いることで、運動戦略に関連した微小な脳活動の評価が可能となることが示唆された。