1997 年 34 巻 1 号 p. 53-57
第35次南極地域観測隊員を対象に越冬中の歩数, 体重を測定し, 第9, 10次隊と比較検討した.第35次隊では, 夏作業中の平均歩数がやや減少し, 船上, 冬期間の平均歩数が増加していた.これは乗り物, 重機等の機械化の影響と, 観測船及び昭和基地の大型化の影響と考えられた.雪面の凹凸による雪上車自体の振動のため内陸旅行隊の往路, 復路の測定はできなかった.内陸夏旅行での観測拠点の建設作業中の平均歩数は同時期の昭和基地滞在隊員とほぼ等しかった.昭和基地滞在者群の体重は越冬後半まで漸増傾向を示したが, その変化は最大でも1%に過ぎなかった.これに対し内陸旅行参加者群では3回の旅行とも出発前に比べ, 帰投時には減少していた.歩数, 体重を比較検討することによって南極越冬隊の生活環境の変化が影響を与えていることが明らかになった.