2016 年 22 巻 4 号 p. 105-110
ライコムギ(×Triticosecale)はパンコムギ(Triticum aestivum L.)とライムギ(Secale cereale L.)を交雑して作った最初の新作物である.属間交雑を行う際に問題となるのが交雑親和性であり,パンコムギとライムギとの交雑親和性は主に優性遺伝子Skr(Kr1)に支配されている.劣性遺伝子skr(kr1)を持つ系統は交雑親和性が高く,比較的容易にライコムギを作ることができる.ライムギとの交雑親和性はコムギの倍数性進化において四倍性コムギの段階で高交雑親和性から低交雑親和性への突然変異が生じたとの報告があるが詳細は明らかでない.本研究ではアジアとロシアの在来四倍性コムギ25品種についてライムギとの交雑親和性の系統間,地域間差異を検討した.その結果,四倍性コムギにおいて,交雑親和性の低いグループ,中程度のグループ,高いグループの3グループに分けることが出来,遺伝的な多様性が存在することがわかった.また,四倍性コムギが示す交雑親和性はパンコムギよりも低く,パンコムギの一部品種が持つ高い交雑親和性は六倍性コムギが成立した後に生じた変異であることが示唆された.