2012 年 19 巻 1 号 p. 95-100
国際会計基準( International Financial Reporting Standards,以下「IFRS」という。)は,投資家に対して,経営の実態を反映した有用な財務情報の開示を行うことを意図している。本稿では,IFRSの特徴を検討した上で,会計基準の内容と事業リスクマネジメントとの関連について検討し,IFRSに事業リスクマネジメントの思考が埋め込まれていることを指摘した。
すなわち,IFRSに基づく適正な財務報告のためには,事前管理の思考が重要であり,経営管理プロセスにおける事業リスクマネジメントと会計処理・財務報告プロセスの結合が求められる。
会計教育においても,IFRSを経営管理と会計を繋ぐ切り口として活用することで事業リスクマネジメント強化のための思考力を育成することができる。
したがって,IFRS導入を単に会計処理や財務報告の問題と理解せず,経営管理プロセスにおける事業リスクマネジメントを強化するための視点を提供するものと捉えて対処すべきことを提案する。