2019 年 26 巻 2 号 p. 27-33
「アベノミクス」の「三本の矢」の一つに数えられる「成長戦略」を実現する手段として,しばしば取り上げられるのが「規制緩和」である.この「規制緩和」の議論に対する経済学からのアプローチの一つに,「混合寡占」モデルがある.その代表的な結論は,企業数が多くない場合には,民営化は正当化されない,というものである.これに対して,本論文では,保苅(2019)の垂直的構造下での混合複占モデルに,費用削減のための「ルーティン・イノベーション」の内生化アプローチを導入することで,垂直的構造の代表例の一つである「垂直統合型企業」モデルの下では,寡占において最も企業数の少ない複占においてさえも,民営化が社会的に好ましいことを示す.