2016 年 68 巻 3 号 p. 225-229
近年,DNA 中・ATP 中あるいは半導体材料中の電荷移動など,バイオ・工学応用の観点から有機材料中の電荷輸送はますます注目を集めている.本稿では高分子材料としては最も単純な構造をしているポリエチレン材料中の正孔移動度を計算した.結果,ポリエチレンオリゴマーでは電荷局在化軌道はσ結合性であるため,電子カップリング要素が小さく,再配向エネルギーが大きいため移動度が小さいこと,その鎖長が伸びるにつれ正孔の非局在化の効果が大きくなるため,再配向エネルギーが小さくなり,移動度が上昇することがわかった.