2020 年 72 巻 3 号 p. 239-246
インスリン様成長因子(IGF-1)はインスリンとよく似た構造を持つタンパク質分子であり,細胞の成長,分化などを促進する.一方,インスリンは血糖値を下げる作用をもつタンパク質である.すなわち,インスリンとインスリン様成長因子は似た構造を持っているものの,それぞれ異なる受容体に結合している.これら2 つの分子のどのような差異を利用しているかを推測するために,IGF-1 とインスリンの電子構造の比較を行った.その結果,これらの間で静電ポテンシャルの分布ならびに電子密度分布の特徴的な部位を確認することができた.