日本生態学会誌
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オーストラリア産メジロの越冬群にみられる順位制について
橘川 次郎
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1968 年 18 巻 6 号 p. 235-246

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抄録

オーストラリア産メジロ(Zosterops lateralis)の越冬群は南部から北上する渡り鳥を含み, ニューサウスウェルズ州のアーミデルでは地理的品種の混群からなっている.その個体間の関係を1961年に野外で.1961年および1962年に禽舎で観察した結果.威赫行動はニュージーランド産のものと同様であることがわかった.混群の中で冬鳥の方が留鳥より, また雄の方が雌より一般に優位であるが, 統計的には常に有意な結果をえられなかった.先住効果および社会的学習は順位決定に際してメジロの場合あまり重要でなく, 群内の順位は野外, 禽舎ともに直線的であった, ただし個体間の順位は実験の条件により変動した.禽舎の実験では10羽のメジロから4番を選び, 番毎に小さな禽舎に一定期間隔離した後, 禽舎間の通路をあけて威赫行動を記録した.一般の群行動は冬型のものであったが, 隔離中に発達した定着性と闘争性が禽舎の接続後一時的になわばり防禦の行動として少数個体に現れた.しかしこのなわばり行動は順位制の中で起ったもので, 禽舎間のなわばり配置にまで発達しなかった.実験の結果は, 順位制となわばり制が互に排他的であると一概にいえないことを示唆している.またメジロの冬群内の社会関係が繁殖期のはじめのなわばり形成にあたって意義のあることと解釈できる.優占性と闘争性は二つの異る行動様式の表現で, 前者は順位の直線的関係によって反映され後者はその中で起る逆つつきの頻度に関係している.個体間の闘争は一個体の発現する刺激条件に他の個体が闘争的反応をする結果起るもので, その動機を理解するにはさらに研究を要する.

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© 1968 一般社団法人 日本生態学会
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