日本生態学会誌
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クロヤマアリのコロニーに関する生物経済学的研究 : 3.マユから出た時のハタラキアリの体重
近藤 正樹
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1969 年 19 巻 1 号 p. 8-12

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抄録

ハタラキアリの体重は個体の大きさ(ここでは頭幅で表現する)ばかりではなく, その時における肥満度によっても異り, 肥満度の平均値は, 夏の外働きのアリにおける0.87×10^<-5>から越冬中のアリにおける2.04×10^<-5>まで変動する.ここではマユから出たばかりのハタラキアリはどの程度の体重あるいは肥満度から出発しているかを確めるために1963年7月22日にアリの巣からマユを採集し、25℃, 相対湿度90%で飼育をし, かえったアリを24時間ごとに測定した結果を報告する.頭幅と生重量との相関係数は0.89,頭幅と乾重量との相関係数は0.79といずれも相関関係が高いことを示している.肥満度の平均値は生重量では1.42×10^<-5>, 乾重量では0.32×10^-5であり, 夏にみられるやせたタイプのハタラキアリの値にほぼ類似するし, 夏の外働きのアリと越冬中のアリの中間に位する.一方, 比較のために12月の巣の中から得られた暗灰色(充分黒化していない)のアリだけを抽出して統計をとってみたところ, こちらは越冬中のハタラキアリ全般と同じ肥満度を示すことがわかった.それ故, マユから出る時の肥満度が越冬中のアリも夏にマユから出たアリとほぼ等しいならば, それ以後に肥満したことになる.尚, 夏にマユから出たハタラキアリの測定値を扱うにあたり, まえもってマユから出た日付の差・採集したコロニーによる差・マユから出た時の体色の差によって体重や肥満度に差を生ずるか否かを検討した.その結果きわだった差がないことを確認した.

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© 1969 一般社団法人 日本生態学会
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