日本生態学会誌
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ススキ共同体と土壌との関係に関する研究(I)
佳山 良正吉田 穣治坂井田 智治
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1969 年 19 巻 4 号 p. 137-147

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抄録

この報告は1966年8月に久住, 阿蘇高原で行なった調査成績をまとめたもので, 主として微地形とススキ共同体の生産力との関係について述べた。久住の調査地は大分県種畜場の敷地内で, 事務所の北西にある牧草地の端より広がるススキーササ型草地であって。久住山頂に向って1,210mの間に8plotを設定し, 土壌断面とススキ共同体の構造との関係を検討した。阿蘇の場合は, 大観峰より西へ3kmの地点で, 阿蘇連峰に向って南東に傾斜する草地について172mの間について調査した。久住の場合は2-4°の傾斜で上向しており, その間に2つの小谷を有す。plot 4(深さ12.48m)plot 6(深さ4.84m)がそれで, いずれも草量が大で, とくにplot 4は3,283g/m^2で, 平坦地の2〜8倍に達していた。そしてススキは大形多年になり, 大形多年生草本が優占し, ネザサは著しく減少した。これに対して平坦地はネザサが優占しているが草高は遥かに低い。阿蘇の場合は, 低地のplot 1を起点にするとplot 3は26.3mの高所に位置する。そしてススキ, トダシバ, ネザサは傾斜を上向するほど草高が低くなり, ネザサは単位面積当り個体数の増加を示した。この草高の矮小化は放牧していない点などより, 常時吹き上げる強風の影響も土壌要因に加わっているものと考えられる。土壌断面を比較するといずれも腐植層が厚いが, 現存量の多い個所は, かなり下層まで土壌水分が豊富である。しかし土壌水分と空気との比率も問題になると思われた。また窒素やリン酸が量的に似たような地区間では, むしろ置かん性の塩基の量が大きく生産性に影響を与えるようで, とくにカリなどは大きな要因になっていると思われる。

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© 1969 一般社団法人 日本生態学会
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