日本生態学会誌
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特集 環境教育「生態学会と初等中等教育の連携をめざして」
教育現場における野外調査の実践
古本 大
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2006 年 56 巻 2 号 p. 149-157

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抄録

高校生物のカリキュラム的な制約と時間的な制約によって、野外調査を行うことはなかなかできないのが実状である。その中で、本校独自のカリキュラムとして高校生物の授業や宿題の中で、校内の樹木観察や磯採集などを行っている。これらの課題により、生徒たちは抽象的な生物というものではなく、個々の種を知ることの大切さを初めて認識するようになった。また生物部の短期的な活動として、生物の採集を合宿先や日帰りで行ける海、山、川などいろいろな場所で行い、持ち帰って飼育している。採集・飼育によって、生徒はその生物の分布や生活環境について考えるようになった。長期にわたる研究としてはセミの抜け殻調査や幼虫の羽化の研究、成虫の再捕獲調査など多岐にわたる調査を1995年以降、毎年夏に行ってきた。セミの研究については毎年、大阪府高等学校生徒生物研究発表会で発表させるとともに、数年分をまとめて学生科学賞に応募してきた。賞への応募は研究内容を深めることや、生徒の目的意識を高める効果があった。これらの実践により、生徒は種の多様性や自然環境の大切さを感じるようになっていったようだ。

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© 2006 一般社団法人 日本生態学会
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