日本生態学会誌
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総説
CO_2濃度上昇に対する植物の応答 : 天然のCO_2噴出地の活用
小野田 雄介
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2007 年 57 巻 2 号 p. 145-158

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抄録

大気CO_2濃度上昇は、陸域生態系に大きな影響を及ぼすことが予想されている。植物のCO_2応答(短期的応答や順化)は、制御環境実験、オープントップチャンバー実験、開放系CO_2増加実験などにより、詳細に研究されてきた。しかしながら、数十年以上の長期間に渡る高濃度CO_2環境が、自然生態系にどのような影響を及ぼすかについては、実験設備や実験期間の制約から依然として分からないことが多い。1990年代からこの問題に取り組むユニークな手段として、天然のCO_2噴出地(natural CO_2 spring)が注目されている。本総説では、まず植物のCO_2応答を概説した後、CO_2噴出地が注目される背景、CO_2噴出地とは何かについてまとめ、その後CO_2噴出地を利用した植物研究のメタ解析の結果を報告する。CO_2噴出地において観察される植物の応答は、多くの栽培実験の結果と定性的によく一致する。また定量的には、制御環境実験の結果よりも、開放系CO_2増加実験の結果により近く、CO_2噴出地を利用した研究が、より現実的な植物のCO_2応答を捉えていると言えるかもしれない。CO_2噴出地はまた、高濃度CO_2に対する植物の適応、植生のCO_2応答、土壌のCO_2応答などを研究する上でも有用であり、これらに関する知見についてもレビューする。

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© 2007 一般社団法人 日本生態学会
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