日本生態学会誌
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特集1 生態学における理論研究と実証研究の連携
マメゾウムシの均等産卵行動と意思決定ルールの進化 (<特集1>生態学における理論研究と実証研究の連携)
瀬戸山 雅人嶋田 正和
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2007 年 57 巻 2 号 p. 189-199

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抄録

セコブマメゾウムシ属のマメゾウムシは、豆粒に均等に産卵するという特徴を持つ。まず豆粒に1卵ずつ産んでいき、どの豆粒にも1卵ずつ付いた状態になると、こんどは2卵目を産み始める。このようにして3卵、4卵…と産みつけていく。マメゾウムシは個体数動態論の研究が有名だが、個体群動態と行動生態学の両方の視点から見ると、マメゾウムシ以外で両分野を連携できる動物種は少ない。そこで、マメゾウムシの均等産卵行動を対象に、生物集団の理論と実証の連携の一例を紹介する。まず、ヨツモンマメゾウムシの産卵行動の録画データから、環境情報の要素として7項目を抽出した。そこから目的変数「産卵行動の有無」を設定し、説明変数のいくつかを取り込んだ一般化線形モデル(GLM)として重回帰分析を行なった。AICによるモデル選択の結果は、交互作用型ルールが最適となった。次に、産卵行動の3つの主要なルール(絶対ルール、相対ルール、交互作用型ルール)を、一般化線形モデルと相同のトポロジーを持つニューラルネット・モデルとして構築し、これを遺伝的アルゴリズムで進化させた。その結果、ニューラルネットワークの入力ノードを司る神経細胞の数とリンク数でコスト量を変えながら感度分析を行なうと、コスト高の条件では絶対ルールが進化し、コストが低い条件では交互作用型ルールが進化した。以上のことから、意思決定のルールがどのように進化するかを理解する理論と実証のアプローチについて、将来の展望を考察した。

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© 2007 一般社団法人 日本生態学会
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