日本生態学会誌
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特集1 生態学における理論研究と実証研究の連携
理論と実証分析の相互フィードバック : 植物の繁殖同調モデルを例に (<特集1>生態学における理論研究と実証研究の連携)
佐竹 暁子
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2007 年 57 巻 2 号 p. 200-207

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抄録

多くの植物では、開花および種子生産量が著しく年変動し、個体間で同調することが知られている。この現象は古くから注目され、多くの野外研究および理論的研究がなされてきた。本稿では、貯蔵資源のダイナミックスを捉えた資源収支モデルに焦点を当て、植物の繁殖同調を説明する理論構築と野外データを用いたモデル検証について紹介する。資源収支モデルでは、植物は毎年資源を貯蔵し、貯蔵量がある閾値を超えると貯蔵資源を投資することで開花、引き続いて結実すると仮定される。モデル解析の結果として、植物は繁殖への資源投資量が小さい場合にはある程度の花を毎年一定量咲かせるが、投資量が増すと繁殖後の資源枯渇のため隔年開花へ移行することが予測されている。さらに、花粉を介して他の個体と相互作用することが、個体間での繁殖同調を引き起こす重要な要因であることも示されている。つまり資源収支モデルで重要なパラメータは、繁殖量の変動の大きさを左右する資源減少係数と同調の程度を決める相互作用の強さの二つである。このモデルを検証しにくい点は、開花や結実量は観察できるのに対し、植物内に貯蔵されている資源量は目に見えず直接的観測が難しいところにあった。この問題点を解決したのが資源再構成法である。資源再構成法では、貯蔵資源の量を資源のインプットとアウトプットによる流れの式で書きあらわす。そして、繁殖への資源投資積算量vs.資源インプット積算量の回帰から貯蔵資源量を推定し、続いて繁殖量vs.推定貯蔵資源量の回帰によって資源減少係数および花粉制約の強さを推定する。この2段階の回帰を踏むことで鍵となるモデルパラメータを決定し、モデルの検証が可能になる。以上の方法を、野外の長期繁殖データにあてはめた例を二つ紹介する。

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© 2007 一般社団法人 日本生態学会
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