日本生態学会誌
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特集2 ミクロな世界からの新展開
大陸と海洋を渡り歩く細菌と遺伝子 : 水銀耐性細菌と水銀耐性遺伝子のグローバルな分散 (<特集2>ミクロな世界からの新展開)
松井 一彰成田 勝遠藤 銀朗
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2007 年 57 巻 3 号 p. 390-397

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抄録

水銀は生物に対して高い毒性作用を示す有害重金属である。しかし水銀耐性遺伝子を持つ細菌は、水銀を様々な形態に変換させる事によってその毒性作用を回避する事ができる。このような細菌による水銀の形態変換は、水銀の地球規模での循環にも深く関与していると考えられているが、地球上における水銀耐性細菌および水銀耐性遺伝子の分布・分散様式についてはほとんどわかっていない。近年、砂塵に付着し左細菌は、数千キロメートルという距離を超えて移動・拡散している事が明らかになってきた。また原核生物である細菌は、個体間で遺伝子を授受する「遺伝子の水平伝播」によって同種内における遺伝子の多様さを産み出していると考えられている。本稿では、地球規模で細菌細胞および遺伝子が移動・拡散している事を追跡するための指標として、Bacillus属細菌がもつ水銀耐性遺伝子を指標にした研究例を紹介する。これまでに発見されているBacillus属細菌がもつ水銀耐性遺伝子の多くは、TnMERI1型の水銀耐性トランスポゾンの構造を取っている物が多い。そこでこのTnMERI1型トランスポゾンとその外側にみられるDR (Direct repeat)配列を基に、細菌細胞と水銀耐性遺伝子の分散について検証したところ、(1)水銀耐性遺伝子が細菌種間で水平伝播されており、遺伝子の分散が起こっている事、(2)同一の遺伝子を持つ同属同種の細菌細胞が地球規模で分布している事がわかってきた。今後は目に見える生物を対象に研究されてきた生態学分野の知見も取り入れ、微生物世界の分布・分散についての理解を深めていく必要があると思われる。

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© 2007 一般社団法人 日本生態学会
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