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日本生態学会誌
Vol. 58 (2008) No. 3 p. 205-212

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http://doi.org/10.18960/seitai.58.3_205

特集 中部山岳地域の高山植生と地球温暖化

北緯35°から北緯80°までの広い範囲に分布しているチョウノスケソウ(Dryas octopetala sensu lato)について、中緯度高山の立山個体群と極地ツンドラのニーオルスン個体群を比較しながら、生育環境、葉形質と花特性の変異や環境の変化に対する応答、集団内の遺伝的多様性について紹介し、諸変異の要因について論じた。夏季の積算温度は、立山の方がニーオルスンに比べ3.1倍高かったが、日射量はほぼ同じであった。但し、ニーオルスンにおける日射量は初夏に高く、夏至以降急激に減少していた。このような生育環境の違いに対応して葉形質に違いがみられ、立山を含む中緯度高山帯におけるチョウノスケソウの葉は、ニーオルスンを含む寒帯や亜寒帯の集団に比べてLMA (leaf mass per area)が小さく窒素濃度が高かった.また、雌蕊への投資比(雌蕊重量/雄蕊と雌蕊の重量)は花重量との間に正の相関を示したが、その変化率は立山個体群の方が低く、ニーオルスン個体群に比べて集団内における性表現の変異幅が小さい傾向にあった。さらに、立山個体群における遺伝的多様性は、これまで報告されている北極圏の個体群と比較して低かった。最後に、気候変動に対する本種の応答反応を予測する上で、いくつかの課題を指摘した。

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