希少種であるカワラニガナやツメレンゲが生育し、比較的自然度が高い長野県松本市を流れる梓川の礫河原で、植生と環境要因との関連を明らかにし、希少種の保全や、在来植生にとって必要な環境について考察した。また、同じ扇状地でも砂が多く堆積する立地を持つ千曲川でも調査を行い、礫河川と砂河川で植生の違いも考察した。礫河川の梓川では、テリハノイバラ、カワラハハコなど礫地に出現する種が確認された一方、砂河川の千曲川では、クサヨシ、オギなど低湿地に出現する種や、カヤツリグサやスベリヒユなどの畑地の1年生草本が多く確認された。種組成によって梓川と千曲川の立地を序列化したDCA結果、第1軸の値が高くなるほど、有意に水際からの距離、水面からの比高が減少し、砂礫の粒径が小さくなり、1、2年生草本が増え、木本や被度による帰化率は減るなど植生が変化する傾向が示された。河川植生には、水際からの距離、水面からの比高などで表される撹乱頻度の違い、また、立地の水分環境に影響を与える粒径の違いなど、複数の環境要因が複合的に影響を与えていると考えられる。河川における多様な種組成は、多様な生育立地から生じていることが明らかになった。