日本生態学会誌
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特集 種分化における性選択と性的対立
生態的環境への適応と配偶者選択がもたらす種分化(<特集>種分化における性選択と性的対立)
伊藤 洋
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2009 年 59 巻 3 号 p. 273-280

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抄録

この論文は、同所的種分化に注目し、(1)環境への適応がどのように集団の分化(分断化選択)を促すのか、(2)分断化選択はどのように生殖隔離の進化を促すのか、の2点について現在の理論的知見を紹介するものである。それらの知見は以下のようにまとめられる。①様々な環境(無機的・有機的資源や物理的条件、天敵、競争相手など)への適応が頻度依存分断化選択による進化的分岐を促す可能性があり、その条件は生態的相互作用の種類に依存しない。②有性生殖集団の場合には、様々な交配・遺伝様式によって同類交配が進化する可能性があり、たとえ交配に関わる形質が直接的に分断化選択を受けていなくても、他の形質への分断化選択の間接的効果によって生殖隔離が達成され得る。③同類交配の進化は選り好みのコストによって効果的に抑制され、その程度は交配・遺伝様式によって異なる。④環境の空間構造は遺伝子流を抑制し、種分化を容易にする。

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© 2009 一般社団法人 日本生態学会
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