日本生態学会誌
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特集 三宅島2000 年噴火後の生態系の回復過程
初成土壌環境における微生物 : 三宅島土壌生態系再生のメカニズムを探る(<特集>三宅島2000年噴火後の生態系の回復過程-巨大噴火に対する陸上生態系の応答-)
藤村 玲子佐藤 嘉則難波 謙二太田 寛行
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2011 年 61 巻 2 号 p. 211-218

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抄録

森林をはじめとする植物-土壌生態系では、光合成による一次生産と微生物による有機物分解のバランスが成り立ち、豊かな生物相が維持されている。しかし、火山噴火というイベントはこの生態系を壊してリセットしてしまう。新たに生じた火山灰などの火山砕屑物や溶岩に住み始める生物は、肉眼では見えない微生物である。本稿では、三宅島2000年噴火火山灰堆積物に住みつく微生物について、2003年から6年間にわたって調査してきた結果を紹介する。まず、調査初年時に採取した火山灰堆積物の細菌密度の測定結果では、すでに1gあたり108の高いレベルに達していた。直接試料から抽出したDNAの16SリボソーマルRNA遺伝子を解析した結果は、Leptospirillum ferroxidansAcidithiobacillus ferrooxidansといった独立栄養性の鉄酸化細菌が優占する細菌群集構造を示した。供試火山灰堆積物にはCO2吸収活性があり、十分に高いニトロゲナーゼ活性も検出されており、これらの活性は鉄酸化細菌に由来することが推察された。2009年の調査においても、三宅島雄山上部の火山灰堆積物は酸性状態に維持され、鉄酸化細菌の優占が続き、化学合成無機独立栄養代謝が中心の微生物生態系であることが示唆された。以上の結果をもとに、火山灰堆積物に形成される微生物生態系のエネルギー代謝と初成土壌への有機・無機物質の蓄積について推察する。

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© 2011 一般社団法人 日本生態学会
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