日本生態学会誌
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特集 三宅島2000 年噴火後の生態系の回復過程
三宅島2000年噴火後の生態系の回復過程から学ぶ(<特集>三宅島2000年噴火後の生態系の回復過程-巨大噴火に対する陸上生態系の応答-)
上條 隆志樋口 広芳
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2011 年 61 巻 2 号 p. 219-226

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抄録

三宅島2000年噴火の生態系の回復過程に関する研究から得られた知見を整理した。(1)生物相の変化の概略。2000年噴火の経緯と生物相にみられた主な変化についてまとめた。(2)攪乱モザイク形成。噴火と火山ガス放出によって、堆積深や風向きに応じた攪乱モザイクが形成された。(3)噴火後に増加した種。先駆種や火山ガスに耐性のある種の増加のほか、攪乱後の資源変動が強く関係した大発生が昆虫を中心にみられた。(4)植生と鳥類の回復過程。植生被害と鳥類群集の間には明瞭な関係がみられたが、回復過程としてみた場合、単純な森林性の鳥類の増加傾向は示さなかった。(5)生態系回復のエネルギー源。陸上生態系を支えるエネルギー源は、基本的に太陽からの放射エネルギーである。その一方で、枯死木などの噴火前の光合成産物を分解・消費することによって得られるエネルギー源と硫黄化合物などの無機物の持つ化学エネルギー源の重要性が示唆された。(6)巨大攪乱跡地の総合的モニタリング。三宅島における研究例を踏まえ、巨大攪乱の跡地のモニタリングにおいては、サンプリングデザインを同じにすること、枯死木などの研究対象とされにくい資源の評価の重要性を指摘した。

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© 2011 一般社団法人 日本生態学会
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