日本生態学会誌
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落葉広葉樹林皆伐後の先駆性林分における現存量および純一次生産量の推定
志津 庸子曽出 信宏八代 裕一郎小泉 博大塚 俊之
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2012 年 62 巻 1 号 p. 19-29

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抄録

日本における二次遷移の初期群落は、優占種の交代が非常に速く、低木種から高木種まで様々な生活形が混在する。このような、多種から構成される林分の遷移系列に伴う純一次生産量(NPP)の変化は、構成種の成長特性や優占種の交代に影響される。本研究では、皆伐後7年経過した二次遷移初期群落において、純一次生産量の年々変動を推定する方法として、刈り取り法と相対成長関係式を用いる方法を比較検討した。本調査林分の幹数密度は2005年5月から2009年11月にかけて40700から53300本ha^<-1>に増加した。胸高断面積合計もまた3.4から12.0m^2ha^<-1>まで年々増加した。生活形別にみると2005年5月の時点では低木・亜高木・高木の三つの生活形はほぼ同じ割合を占めていたが、年経過とともに高木種の割合が大きくなった。低木種の枯死と加入本数が他の生活形と比較して非常に多く、亜高木種と高木種は低木種の半分以下であった。落葉広葉樹林皆伐後初期に成立した、このような低木種から高木種まで混在する先駆性林分において、刈り取り法による生産量の推定方法は、地点間のばらつきが大きく、純一次生産量の年々変動を評価することが困難であった。一方、胸高直径を変数とした相対成長関係式を用いた推定方法は胸高に満たない樹木個体の現存量は評価できなかったが、毎年個体を追跡調査することで枯死量を精度よく推定でき、新規加入木の成長量もある程度評価できた。落葉広葉樹伐採跡地において低木種を多く含む林分では、低木種の成長特性から枯死量および新規加入量が多く、これらの評価が生産量を推定する上で重要であった。以上より、精度良く生産量の年変動を評価するためには、枯死や新規加入を追跡する胸高直径-乾重量の相対成長関係式を用いた推定法が適しているといえる。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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