日本生態学会誌
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大島賞受賞者総説
森林生態系の炭素循環 : Takayama Forestでの10年間で分かったことと、分からなかったこと(大島賞受賞者総説)
大塚 俊之
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2012 年 62 巻 1 号 p. 31-44

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抄録

岐阜大学流域圏科学研究センター・高山試験地の落葉広葉樹二次林(Takayama Forest)は、アジア地域では最も古く1993年から微気象学的な渦相関法によるCO2フラックス観測が開始された。1998年からは、方形区を用いた森林動態と物質生産の研究を組み合わせることにより、生態学的なバイオメトリック法による炭素循環研究が開始された。約10年に渡るモニタリングの結果、フラックス観測とリンクして生態系純生産量(NEP, Net ecosystem production)の変動を研究する手法を確立し、森林のどこにどのように炭素が蓄積するかを明らかにした。独立栄養生物による正味の炭素固定量としてのCO2吸収量と、従属栄養生物の分解呼吸によるCO2放出量の収支として求められた平均のバイオメトリックNEPは2.1 tC ha-1yr-1で、渦相関法NEP (2.8 tC ha-1yr-1)とおおよそ一致した。樹木の木部純一次生産量は0.86-1.96 tC ha-1yr-1の範囲で大きく変動し、渦相関法NEPの変動と正の相関があった。この事は、樹木成長量の年々変動がNEPの変動に大きく寄与していることを示している。しかしTakayama Forestでは、調査期間内の樹木の枯死量が多いために、バイオマスには炭素があまり溜まらずに、土壌有機物のような非生物的プールに多くの炭素が溜まっていた。一方で、非生物的プールへの炭素蓄積の定量化とその機構の解明は残された課題である。炭素循環研究における今後の重要なテーマは、生態系内のプール(特に非生物的プール)に、炭素がどれだけの量、どれだけの期間に渡って蓄積されるのかという事である。このために、炭素プールへの分配とその滞留時間について、平衡状態の各植生帯における比較生態学的研究と、非平衡状態の遷移プロセスを追ったモニタリング研究が必要である。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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