日本生態学会誌
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原著
信濃川の河畔植生とその立地環境
堀毛 一秀島野 光司
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2012 年 62 巻 2 号 p. 121-142

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抄録

本研究では信濃川を対象として、上流の長野県川上村から下流の新潟県新潟市までの植生とその立地環境を調べることにより、植生と環境要因との関連を明らかにし、信濃川における現存植物種の構成や、在来植生にとって必要な環境について考察した。本研究において、信濃川全域を地形の特徴から渓谷、扇状地、沖積平野の3つの地形単位に区分し、計410地点を調査した。高水敷ではノイバラやニセアカシアなどの陸地に生育し、寿命が長い木本類が主に確認され、低水敷では水辺に生育するツルヨシや、水辺に生育し、かつ寿命の短いオオイヌタデのような1年生草本や2年生草本が主にみられた。渓谷や扇状地などの河川上流部に形成される立地では、低水敷と同様に水辺に生育し、寿命の短い1・2年草が主にみられ、反対に沖積平野のような河川下流域に形成される立地では、高水敷と同様に陸地に生育し、寿命の長い木本類が主にみられた。また、上流の渓谷では山地に生育するとされる植物がみられた。本研究の結果、低水敷などの攪乱の影響を受けやすい立地においては様々な種が出現し、かつ河川本来の植生が出現する傾向がみられる一方、高水敷などの攪乱の影響を受けにくく、安定した立地においては植生が単一化し、通常河畔外に生育立地を持つ植物が出現する傾向がみられた。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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