日本生態学会誌
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特集2 ユネスコMAB(人間と生物圏)計画―日本発ユネスコエコパーク制度の構築に向けて
ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)の世界での活用事例(<特集2>ユネスコMAB(人間と生物圏)計画-日本発ユネスコエコパーク制度の構築に向けて)
比嘉 基紀若松 伸彦池田 史枝
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2012 年 62 巻 3 号 p. 365-373

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抄録

生物圏保存地域(Biosphere Reserve、日本国内での通称:ユネスコエコパーク)は、MAB(人間と生物圏)計画の最重要事業の一つで、3つの機能的活動(保全・持続的開発・学術的支援)により、豊かな人間生活と自然環境の保全の両立を目指す国際的な自然保護区である。発足以降世界的に登録地は増え続け、2012年4月時点で114ヵ国580地点が登録されている。日本では、1980年代に志賀高原、白山、大台ケ原・大峰、屋久島が登録された。しかし、国内での生物圏保存地域の認知度は低い。今後、国内での生物圏保存地域の活用および登録を推進するために、ドイツ、ブラジル、モロッコ、メキシコの活用事例を紹介する。ドイツのRhonでは、伝統的農業の重要性について見直しをすすめ、生物圏保存地域内で生産された農作物に付加価値(ブランド価値)をつけることに成功していた。さらに、子ども向けの教育プログラムも実施している。ブラジルのサンパウロ市Greenbeltでは、貧困層の若者向けに「エコジョブトレーニング」プログラムを実施している。プログラムの内容は持続可能な環境、農業、廃棄物管理など多岐にわたり、受講者の自立の手助けとなっている。モロッコのArganeraieでは、アルガンツリーの保全と持続的な利用を促進する取り組みを進めている。メキシコのSierra Gordaでは、行政組織・研究機関・地域住民が連携した統合なアプローチによって、自然環境の保全と豊かな人間生活の両立の実現に取り組んでいる。それぞれの地域の自然環境および文化や政治・経済的背景は一様ではないが、いくつかの事例は国内の生物圏保存地域でも実施可能であり、自然環境の保全とそれを生かした地域経済の発展に対して、有用性の高いプログラムである。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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