日本生態学会誌
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原著
開放型チャンバーによる温暖化実験がコナラ種子の発達に与える影響
中村 こずえ佐野 淳之
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2013 年 63 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

本研究は、コナラ二次林の樹冠に温暖化を想定したオープントップキャノピーチャンバー(Open Top Canopy Chamber以下OTCCと記述)を3基設置し、OTCCの性能を評価するとともに、温度上昇がコナラ種子の発達に与える影響を明らかにすることを目的とする。OTCC内とOTCC外(以下controlと記述)のシュートに着生している種子の長さと幅を約10日ごとに計測した。また、それぞれの樹冠直下に設置したシードトラップによって落下種子を定期的に回収した。着生種子の長さと幅は、8月上旬から9月中旬までOTCCでcontrolより有意に大きかった。また、発芽能力があるといわれている9月中旬以降の虫害種子の長さと幅がOTCCでcontrolより有意に大きかった。これらのことは、OTCCがコナラ樹冠における温暖化実験において有効であり、温度上昇によって発達中の種子の成長速度が速くなり、サイズが大きくなることによって、虫害を受けても発芽能力を失わない種子が増え、コナラの更新に有利に働くことを示唆している。

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© 2013 一般社団法人 日本生態学会
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