日本生態学会誌
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特集 枯死木をめぐる生物間相互作用
枯死木をめぐる生物間相互作用 : 企画趣旨と今後の展望(<特集>枯死木をめぐる生物間相互作用)
深澤 遊山下 聡
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2013 年 63 巻 3 号 p. 301-309

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抄録

倒木・立枯れ・切株などの枯死木や、枯れ枝・心材腐朽といった生木の枯死部(以後、まとめて枯死木と呼ぶ)は多様な生物の住み場所や食物資源として森林生態系の種多様性の維持に重要な役割を果たしている。幅広い生物群の多様性に果たす枯死木の重要性が明らかにされてきているが、それらの生物種間の相互作用のネットワークについてはほとんど分かっていない。生物間相互作用のネットワーク構造を明らかにすることは、生物群集の時間的安定性や撹乱に対する抵抗性やレジリエンスを予測するために重要である。本特集では、枯死木の分解に主要な役割を果たす真菌類(fungi)による材分解がその他の生物群集に与える影響を起点として、枯死木をめぐる様々な分類群の生物群集の直接的・間接的、栄養・非栄養の相互作用のネットワーク(生態ネットワーク)をつなげられる可能性が示された。今後は、いまだ調べられていない分類群の生物群集を含んだ生態ネットワークの構造に関する研究を進めるとともに、それらの時間的・空間的な動態を明らかにしていくことが、森林生態系の生物群集の安定性に果たす枯死木の役割を明らかにする上で重要になる。

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© 2013 一般社団法人 日本生態学会
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