日本生態学会誌
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特集2 持続可能社会を実現するための実効性のある制度としてのユネスコエコパークの可能性
只見ユネスコエコパークが目指すもの ―過疎・高齢化に直面する山間地域における自然環境と資源を活用した地域振興―
鈴木 和次郎中野 陽介酒井 暁子
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2016 年 66 巻 1 号 p. 135-146

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抄録

福島県の西端に位置する只見町は、日本有数の豪雪地帯で一年のうち半年は雪の中にある。約74,000 ha の広大な面積の90%以上を山林原野が占め、人口はわずか4,600 人程である。第二次世界大戦後の只見川電源開発による巨大な田子倉ダムと水力発電所を持つが、特筆される産業はなく、過疎・高齢化が地域社会の衰退に拍車をかけている。そうした中で、只見町は平成の広域合併を選択せず、独自の町づくりに着手した。その指針として町民参加によって「第六次只見町振興計画」が策定され、活動のスローガンとして「自然首都・只見」宣言が採択された。それは、これまで地域振興の大きな障害と考えられてきた豪雪とブナ林に代表される自然環境を、受け入れてさらに価値を見出し、それらに育まれてきた伝統的な生活・文化・産業を守ることによって地域の発展を目指すとの内容である。只見町は、これを具体化する包括的な手段として、ユネスコMAB 計画における生物圏保存地域(Biosphere Reserve, 国内呼称:ユネスコエコパーク)を目指すことを戦略的に選択した。ユネスコエコパークでは、原生的な自然環境と生物多様性を保護しつつ、それらから得られる資源を持続可能な形で利活用し、もって地域の社会経済的な発展を目指す。只見町では、歴史的に見ると、焼畑を中心に、狩猟、採取、漁労、林業などの複合的な生業によって地域社会が成り立ってきた。こうした自然に依存した生活形態は、現在でもなお色濃くこの地域社会を特徴付けている。只見ユネスコエコパークでは、こうした伝統的な生活や地場産業を大切にし、地域の発展を模索する。また、こうした取り組みを、過疎と高齢化に直面する全国各地の山間地の自治体に発信することで、ユネスコが期待する世界モデルとしての機能を担ってゆきたい。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会
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