日本生態学会誌
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学術情報特集1 若手研究者のキャリアパス支援
労働契約法の改正と実務への影響
篠原 信貴
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2016 年 66 巻 1 号 p. 181-191

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抄録

有期労働契約に関する平成24 年度労働契約法改正、特に無期転換ルールとこれによって生じると懸念される雇止めを念頭に解説し、検討を加える。無期労働契約における解約自由の修正(解雇権濫用法理)、有期労働契約における期間満了の効果の修正(労働契約法19 条)が現在の雇用終了に関する法的ルールを作り出しており、解雇はもちろ ん、一定の雇止めについても合理性・相当性が求められている。つまり、使用者にとって解雇は不可能であるが雇止めは可能であるというシンプルな構造にはなっていない。労働契約法改正により労働契約法18 条において導入された原則5 年を超えて有期労働契約を反復更新している労働者に無期転換申込権を付与するという無期転換ルールは、この雇用終了に関する法的ルールと並存して設定された。そのため、無期転換ルールの回避を意図する雇止めが生じた場合でも、当該雇止めは裁判の場においては労働契約法19 条に基づく審査を免れることはできず、他方で無期転換後に解雇に至った場合には解雇権濫用法理によって審査がなされる。この両審査は、雇止めの場合には雇用継続に対する合理的な期待の有無と雇止めの合理性・相当性審査という二段階審査であるが、解雇の場合には必ず合理性・相当性審査がなされるという一段階の審査であるという点、及び合理性・相当性の中身が解雇の場合にやや厳格であるという点に差異がある。無期転換回避のための雇止めが生じるとすれば、この差異を捉えてなされることになるが、これをどのように評価すべきであるのかは、労働契約の内容・運用によって異なる。そこで、解雇・雇止めの適否に影響を与えうる要素を人事管理について正社員と非正規社員(限定正社員)の視点から整理し、また雇用継続の期待に関して不更新条項の運用がもたらす影響を分析する。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会
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