日本生態学会誌
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特集1 生態系における汚染の動態と影響
生態系における汚染の動態と影響:趣旨説明と総括
綿貫 豊関島 恒夫
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 66 巻 1 号 p. 31-35

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抄録

環境化学分野では環境汚染のモニタリング、影響評価、コントロールのためにこれまで数多くの研究がなされてきた。その結果、過去に排出され未だに環境中に蓄積している物質に加え、新規に開発・合成された化学物質の影響により、生態系における汚染は今現在も進行しており、野生生物に対する影響も時として甚大になることが明らかとなってきた。一方、自然界における汚染物質の挙動は、親水性などの汚染物質の性質だけでなく、汚染物質を摂取した動物の生理・行動特性や汚染物質が取り込まれた食物網や生態系によっても異なるので、その理解には生態学的視点が欠かせない。従来、環境汚染物質の影響評価は毒性試験を通した催奇形性や致死率の評価、あるいは自然界における残留蓄積量の評価に焦点があてられてきたが、生態学は個体群・群集・生態系といったより複雑な系を対象とした影響評価に貢献できるだろう。このシンポジウムではさらに、リスク削減や回避の目標を明確にした上で、モニタリングと影響評価のコストを組み込んだ現実的対応策にもとづいた「順応的管理」の考えを導入することや、汚染物質に対する感受性の種内変異を考慮した集団遺伝学的アプローチなどを取り入れることが提案された。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会
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