日本生態学会誌
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特集1 生態系における汚染の動態と影響
環境汚染物質による生態リスク管理
松田 裕之
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 66 巻 1 号 p. 91-94

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抄録

化学物質による環境汚染の生態系への影響は、人の健康影響とともに1960 年代以後に社会問題化したが、毒性の原因物質をつきとめ、発生源を断つことにより、毒性の強い物質による環境汚染は減りつつある。化学物質の毒性は 人の健康リスクと同様に実験動物の個体への影響によって評価されることが多い。しかし、次世代の人類が持続可能に生態系サービスを受け続けるという自然保護の目的からみて、野生生物の個体群の存続への影響を評価すべきである。毎年数万ともいわれる新規の人工化学物質の毒性をすべて評価することはできないし、すべての生物種への影響を実験的に吟味することもできない。そのため、化学物質の分子特性を考慮した毒性の予測手法や種間外挿などを使わざるを得ない。しかし、幼虫時代を水圏で過ごすトンボ類への影響など、限られた実験動物による毒性試験では予測できない影響もみられる。また、実験で懸念された影響予測が実際に汚染された野外の生態系調査によって見直されることもある。むしろ、化学物質の許認可を暫定的に行ったうえで事後検証を行い、規制措置を見直すことも考えられる。このような順応的管理は水産資源や野生動物管理などで多用されるが、環境汚染対策にも有効かもしれない。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会
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