日本生態学会誌
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特集4 高等植物の道管流・師管流の計測技術と生態学における研究展開
水と炭素の交差点としての葉
―CO2 拡散コンダクタンスについて―
溝上 祐介寺島 一郎
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2016 年 66 巻 2 号 p. 477-487

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抄録

光合成の基質であるCO2は大気中から、気孔、細胞間隙、細胞壁、細胞膜、葉緑体胞膜を経て葉緑体ストロマまで拡散する。この拡散経路は2つの抵抗、気孔抵抗(Rs)と葉肉抵抗(Rm)に大別される。通常はこれらの抵抗の逆数、気孔コンダクタンス(gs)、葉肉コンダクタンス(gm)をCO2の拡散しやすさを表す指標として用いる。CO2拡散経路において、gsの環境応答メカニズムの研究は多くあるが、gmについての研究はまだ少ない。その理由として、gmgsと同程度の値であり光合成の律速要因として重要である、といった認識や、gmgs同様、変化するものであるといった認識が希薄であるからと考えられる。さらに、gmの測定方法が難しいこともその理由として考えられる。そこで、本稿では、特にgmのさまざまな測定方法を注意点を交えながら解説した。また、実際にパラメータの設定などで、得られるgmがどの程度変化するかを解析した。gmの測定方法は、クロロフィル蛍光法、カーブフィッティング法、炭素安定同位体法の3つに大別され、これらはガス交換測定が基本となっている。さらにクロロフィル蛍光法にはconstant J methodとvariable J methodがある。カーブフィッティング法、constant J methodは環境条件によらずgmを一定と仮定しているため、gmが変化することが分かってきた現在、推奨できる方法ではない。variable J methodは、低O2条件で、クロロフィル蛍光測定に細心の注意を払えば使えるが、炭素安定同位体法と併用することが望ましい。炭素安定同位体法は、現在もっとも信頼されている測定方法であるが、やはり、パラメータの設定や、測定環境には細心の注意が必要である。gmはCO2濃度の変化に応答すると報告されており、この応答にパラメータの設定が与える影響を解析したところ、大きく影響を与えるのはミトコンドリア呼吸が起きていないと仮定した時のCO2補償点(Γ*)と光照射下での呼吸速度(Rd)であった。これらのパラメータは文献値を用いる場合も多いが、植物種、生育条件、測定条件ごとに値が異なるため、Laisk法を用いて測定すべきである。以上のように、gmの測定には多くの注意点があるが、精確なgmを測定することが葉内のCO2拡散を理解する上で大切である。

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© 2016 一般社団法人 日本生態学会
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